網膜、硝子体について
網膜とは、カメラで言うと、フイルムにあたる部分で、脳と同じ中枢神経系組織です。10層に分かれていてさまざまな光の情報を脳へ伝える役割をもっています。
硝子体とは、網膜に囲まれた内腔をうめるゼリー状の透明な組織です。網膜や水晶体の代謝に関与しており、99%は水分で残りのほとんどはコラーゲンとヒアルロン酸です。
この硝子体が網膜を牽引したり、混濁や網膜の血管からの出血を起こし、様々な眼疾患を招きます。硝子体手術では、硝子体を切除して網膜の機能を回復させることが可能です。
治療方法
外科手術
局所麻酔を行い、角膜の横に器具などを挿入するための穴を開けます。
灌流液を入れて眼圧を保ちながら、眼内を照らす照明や硝子体カッターを挿入し、混濁した硝子体や増殖膜を切除、吸引除去します。
疾患によっては切除した硝子体のかわりに内部から網膜を抑えるために空気や特別なガスを眼内に入れる場合があります。
症例により異なりますが、所要時間は30分〜1時間ほどです。
手術の注意事項
手術後は出血のリスクがあるため、目に触れないようにご注意ください。
眼内にガスや液体を入れた場合、しばらくうつ伏せ姿勢などで過ごす必要があります。
合併症や感染症を予防するため、処方された点眼薬は医師の指示に従い点眼してください。
網膜硝子体手術が適応される症状
網膜硝子体手術を受けることが出来ない方
- 局所麻酔になるため全身麻酔が必要な方
- 全身管理が難しい方
黄斑上膜(黄斑前膜)
症状
かさぶたのような膜が黄斑の網膜上にでき、その膜によって視覚情報がさえぎられ、見えずらくなります。
物が歪んで見える症状が現れ、徐々に視力が低下していきます。
手術方法
硝子体を切除し、膜を剥がします。
手術は局所麻酔を用いて約40分程度で行うことができるため、日帰りでの手術も可能です。
黄斑円孔
症状
黄斑部の網膜に円形の穴(円孔)が開いてしまう状態のことです。
初期段階では自覚症状があまり出ませんが、徐々に視力低下や物が歪んで見える、中心暗転(見たいものがみえない状態)などの症状があります。
手術方法
硝子体を網膜から剥がして切除し、眼球内部に気体を注入する手術を行います。
※硝子体は切除しても視覚に直接影響はございません。
硝子体出血
症状
眼内の血管からの出血が硝子体の中に入り込んだ状態です。
出血によって光が遮られぼやけて見える、一部分が欠けて見えるなどの症状があります。
手術方法
軽度
経過観察にて様子を見ます。出血量が少ない場合は自然吸収されます。
中度〜重度
止血剤や血管強化剤、出血の吸収を促す薬の投与で治療を行います。
出血がなかなか吸収されない場合は硝子体手術を行い、血管が混じった硝子体を切除します。
網膜剥離
症状
硝子体が収縮し網膜が裂け(網膜裂孔)そこから水が入り網膜が剥がれる症状です。
チラチラと黒いものが動いて見える(飛蚊症)、視力低下、視野欠損などのさまざまな症状があります。
手術方法
硝子体手術
網膜剥離の原因となった硝子体を切除します。眼内に空気を入れて剥離した網膜を、眼球の後ろに貼り付けた状態にして、網膜が裂けた箇所の周辺にレーザー照射を行います。
手術後は数日間うつぶせ体位での安静が必要です。
レーザー光凝固術
網膜裂孔(網膜が裂けた状態)が出来て間もない状況や網膜円孔(網膜に丸い穴が開く)が見つかった場合の治療方法です。
瞳孔から網膜の穴周辺にレーザーを照射します。即日で治療を行う事が可能です。
網膜剥離が進行した場合にはこの治療法が適応ではないので手術へ移行となります。
糖尿病網膜症
症状
糖尿病により、血糖値が高い状態が続いた場合に起こる合併症です。
初期段階の状態で、見え方に変化はありませんが、放置しておくと次第に見えなくなり、最悪の場合失明する可能性が高くなります。
糖尿病網膜症は
- 単純網膜症(毛細血管が潰れ始める)
- 増殖前網膜症(血液が網膜に十分に流れなくなる)
- 増殖網膜症(血管から出血、網膜剥離)
と進行していきます。
手術方法
硝子体手術
硝子体出血や網膜剥離が起きている場合は硝子体手術が必要となります。
硝子体内の出血を吸引し、剥がれた網膜を元に戻します。
レーザー光凝固術
網膜にレーザー照射し、新生血管の発生を防ぐ方法です。
治療時間は点眼麻酔後片眼約15~30分で手術が可能です。